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「穴ツアー」体験記 ウォン美枝子

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高レベル放射性廃棄物最終処分実験地見学ツアー(企画人:田口ランディ)


通称「穴ツアー」。
「女だけの『穴ツアー』なんだけどさ、行く?」とランディさんに
声をかけていただいた。
「え、えっ、女だけの あ、穴ツアー?」一瞬、身構えたものの
「地下500m、高レベル放射性廃棄物最終処分実験地見学」舌のもつれるようなツアー名にただならぬ気配を感じ「い、行きます!」と即答。
「現場主義、身体で感じる」がモットーの私は
このチャンスは逃せないと直感。
長い年月にわたり原子力問題に向き合い様々な活動をされているランディさんの企画、尊敬、敬愛する湯川れい子さんもご一緒なさると伺いさらにモチベーションが高まり、参加メンバーは年齢バラバラ(19歳~80歳)職業さまざま、も魅力。この願っても無いリアル体験は自分にとって大事なものになるだろう予感の参加になった。

♪発車~オ~ライ~♪
♪あかるく~あかるく~走るのよ~~♪

「高レベル放射性廃棄物最終処分実験地見学ツアー」はランディさんの歌声「バスガール」でスタート!ほとんどが初対面の女子だけ12名の貸し切りバスは名古屋市内から目的地(岐阜・瑞浪)へ向かう。原子力問題のなんとも重いテーマを抱えての見学ツアーのスタートはいきなり始まったランディさんの♪「バスガール」でみんなの緊張が一気に和らいだ。
バスガイド席に立ちフルコーラスをしっかりと歌われ、
出だしは快調。天気は快晴。
走行バス中、同行の経産省の担当の方(勿論女性)からたいへん流暢に詳細な説明が始まり、熱心に耳を傾ける参加者。その後、一人一人の自己紹介が続き、あっという間に70分が経過。緑豊かな自然に囲まれた目的地「瑞浪超深地層研究所」に到着。案内してくださる研究所(科学者)の方から事前説明を一時間ほど受け、現場作業服に着替え、ヘルメットをかぶり、いよいよ未知の世界、地下500mへ。地上から深度470m地点まで円筒形の現場エレベーターで降下、残り30mを螺旋階段90段を徒歩で降り、深度500地点に到着。
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意外に深地下の実感がない。地上のトンネル建設現場のよう。
しかし、説明を聞きながら進むうち、湿度100%、微妙な暑さの温度、その空気感に少しずつ息苦しさと緊張を感じながら、石と水の深地下世界を体感していく。作業服のツナギの中は徐々に汗でびっしょり、さながらダイエットスーツのよう。
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天井や壁から常に滴り落ちる水を避け流すため工夫したという白いシートラインのアーチが連続し、両壁には幾数種、幾数本の配管が横走り、実験研究の計測器や装置が各所に設けられている。
コンクリート吹き付け壁のあちこちから湧き流れ出る水はコンクリートの石灰分を溶かし白い浸み垂れのかたまりになっている。
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に触れてみるとなま温かくわずかな滑りがある。なんと、この目の前に流れ出ている水は2万年前の雨水だそう。今この瞬間に2万年前の水に触れている現実に感動!初めて500mの深地下であることを実感する。途中、案内役の研究所の方も初めて見たというこの環境で生息する一匹の生き物の遭遇。「イモリ?ヤモリ?とかげ?」みんなで盛り上がるが結論は不明のまま。
(後に調べた結果、イモリは井守りで水を守る両生類、ヤモリは家守りで陸上のみで生息する爬虫類、故にイモリと決定。)くっきりと鮮明な縦縞模様の背は2万年前の雨水に濡れ光って美しい。地球は「水の惑星」なのだと地中でも実感。こんな神聖な地中に放射性廃棄物を埋め10万年もかけなければ地球に還せない。人間の進化っていったいなんだろう?

現在、日本では法律で高レベル放射性廃棄物は「地層処分」と決まっているが処分地は決定していない。この岐阜(瑞浪)と北海道(幌延)の2ヶ所で研究実験が進行しているがあくまでも研究実験地であって決定地ではない。と、経産省の方も研究所の方も何度も説明、解説中に話される度に、建前と現実の狭間、その深刻さが痛い。実際の処分地決定には諸問題の数々で多くの困難を抱え、決定には数十年掛かり、決定してからも建設から完成までに100年、その後廃棄物が問題のない状態になるまで10万年、その全プロセスに費やされる資金も半端ない桁数だろう。~~頭クラクラ。。。把握不能。。。このとんでもなく現実離れした数字の数々が現実!!なのだ!!
そして、紛れもなく廃棄物は現実に存在し、処分地決定から施設完成までの長期間、地震や様々な不安を抱えながら地上で中間貯蔵され続けなければならない。これ以上増え続ける再稼動など許されるはずがない。
こんな超危険なゴミ遺産を残すなんて、未来に対してどう謝罪し、どう許されるだろうか。戦後、発展、進歩、開発のスピードに「魂」を置き去りにし、その平和と豊かさに油断した果ての堕落なのだろうか。
原子力の問題はその象徴の一つだ。。。
なんで?なぜ?どうして?。。。日本も世界もあまりにも多くの問題が益々浮き彫りにされ、閉塞感いっぱいで八方塞がりに思える現況。そんな「今」に私たちは生かされ、生きている。
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この先、」。。。
力強く優しく牽引してくださるお二人の後ろ姿。

」から地上に出た時、目の前に広がったあまりにも美しい青空と雲。
この開放感は、かつてない特別の感覚だった。
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今回の体験は、原子力という重いテーマをリアルに自分の問題として捉え
「知ること」「感じること」「考えること」「表現すること」を再認識するツアーとなった。ともかく今自分ができる最良のことを一つ一つ積み重ねよう。規模や力は小さくとも「未来への良き種を」と、私たち社会全体が、置き去りにしてきてしまった「魂」を取り戻し、「意識の成長」に繋がっていくことを強く想い描きながら。。。

帰路のバスが終点に近づいた頃、「あっ、虹!」と参加者の一人が発見。太陽の周りに縦に短く太い虹が(アーチ状でもくっきりの虹でもなかったけれど)まるで今を象徴する希望を示してくれたようで、嬉しくも身の引き締まる想いでツアーを終えた。きっとオフィス・レインボーの湯川先生がご一緒してくださったからの「虹」かもしれない。

「バスガール」の明るい歌声でスタートし、
「虹」で締めくくれたこのツアー
♪発車オーライ~♪
♪あかるく~あかるく~走るのよ~♪


ランディさん、湯川先生、ご一緒くださった皆さま、
ありがとうございました!
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by wtwong | 2016-09-24 01:06