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「いったい私のピアノはどれ?」
(マイ・ベーゼンが我が家にたどり着くまで、、、)
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 私は、スタジオという特殊な空間で、限られた時間内に、自分が求めている音楽を表現できる演奏家ではありません。
25歳ぐらいにアメリカから帰国してから、所謂スタジオミュージシャンとして働くわけですが、打ちのめされる事ばかりでしたね。
神経症や不安症、対人恐怖などもあったので、スタジオは地獄のような場所でした。
演奏家としての自信も無かったし、最悪でしたね。

 インディーズレーベル「さとわミュージック」を美枝子さんと一緒に立ち上げた時、スタジオで録音制作をしたいと、これっぽっちも思わなかった。
で、私設のスタジオに録音に耐えうるピアノを運び込んで、他の人を気にしたり、時間や制作費に制限されることなく、とことん向き合うしか無いと、考えたわけです。

 とは言え、録音に耐えうるピアノって、、、、
当初はスタンウェイならBタイプ、ベーゼンドルファーなら225あたりを考えていました。
当時で800万円ぐらいでしょうか、、、
それでも借金しないと買えない、高価な買い物です。
でも実際にショールームに試弾しに行って、フルコンサートの音を聞いたら、もう戻れない。(汗)
私が買ったベーゼンドルファー290は当時で1450万円でした。

 こんな高価な買い物なんか、今までにしたことはないし、当然借金したりするわけですが、返せるあてがあるわけじゃない。
でも、買わないということは、他に自分の音楽に向き合う方法がない以上、音楽を断念するということだったわけです。
いや〜追い詰められましたね〜

 まずベーゼンかスタンウェイか迷っていました。
どっちを選んだら良いのか、その手がかりがない。
結局ベーゼンを選んだキッカケは、寺山真一翁さんに一言言われたことでした。
「ウォンさんにはベーゼンがきっと似合いますよ」って、、、
今考えると、なんか根拠があったのかな〜〜?www
でも、私はやはりスタンウェイではなく、ベーゼンでよかったと思いますね。
ベーゼンの音楽性は、自分にやはりピッタリだったと思う。
寺山さんを通して、宇宙が私に選ばせたというほかないですね。

 でもベーゼンと言えども、楽器によって個体差がすごくある。
ショールームにある5台のベーゼン290から、一体どれを選んだら良いの?
今ならピアノのことを少しは分かってきてるので、選ぶことが出来ると思う。
ピアノに求めるものがハッキリしている。
でも、当時、ピアノのグレードを判断する耳なんか、持っていなかった。
ピアノに関する知識なんて、何もなかった、、、
いったい私のピアノはどれ?
迷っていると、日本ベーゼンドルファー社の主任調律師が「実はまだ調整していない日本に運ばれたばかりのピアノがあるんですが、、、」
そう言って倉庫から運び出されたベーゼン290は、まだハンマーに針が入っていない、まっさらの音、つまりひどい音だったのです。
これから音作りがされる前のピアノの音って、最悪なのです。

 最終的にはそのピアノが我が家に来ることになりました。
でも、それを決定するまで、どんなに追いつめられたか、、。
だって、選ぶピアノが、果たして本当に良いピアノなのかどうかわからない。
しかも1450万円、借金して、返せるあてがあるわけじゃない。
何よりも、このピアノを通して、自分の音楽を成就することが出来るのかどうか、まったく確実なものなんかない。

 そんな混沌としていた私に一冊の本が届いた。
山川紘矢さん、亜希子さん夫妻が送ってくれた、その本のタイトルは「アルケミスト」、、、、
私は最終決定するために、掛川市にあるベーゼンのショールームに行く新幹線の中で、この本を号泣しながら読んだのは、いまでも忘れられない。
これも山川夫妻を通して、私を後押ししてくれた、宇宙のはからいなのかな〜〜
宝物は、きっと足元に埋まっている、、、

 さて、美枝子さんと父親から頭金を借りて(そう言えば、まだ返してない(汗))、後はローンを組みました。
そうやってやってきたベーゼン290は、実は「インペリアル」つまり皇帝とかって名前がついています。
そもそも、2000人規模のホールの為に作られたピアノ。
小さな私設のスタジオに、やっとこさ入って、一体どうしたら良いの?
もちろん帝王ごときの俺様ぶり。
しかもじゃじゃ馬と来ている。
はじめは茫然自失でした。
どうやってこのピアノを弾きこなせばいいの??
鍛えられました、ベーゼン290に、、、はい、、、

 ピアノに育てられた、今、本当にそう思います。
演奏し、録音し、プレイバックし、そしてまた演奏する。
それを繰り返す中で、ようやく自分の音楽が見えてきたと思います。
自分の演奏を聴き返すことは、本当に苦行でした。
でも、それ以外に方法はないのです。
演奏して、録音し、プレイバックし、自分が求めている音楽がそこに録音されているのかどうか。
「求めている」と言っても、求めているものがどんな音楽なのか分かっているわけじゃない。
「魂が求めている音楽」が刻印されているのかどうか、、、、
その繰り返しを、一体どれだけやったろう。
「DohYoh1」あたりは、一曲を1000テイク近く録音したと思う。

 「魂が求める音楽」それを自覚的にわかっていれば、多分1000テイクも録音する必要はなかったでしょう。
でも、ただただ暗中模索でした。
今でもわからないですよ「魂が私を通して、表現させようとしている音楽」、、、
やれることは、ただただピアノの前に座ること、、、
あ、勿論音出さなくっちゃ駄目だけど、、、www

 さて、確かローンは30年ぐらいの返済だったと思うけど、実は数年で返済できました。
東芝EMIがリリースしたコンピレーションアルバム「feel」に楽曲を提供したんですね。
そのコンピレーションCDには基本的にはレコードメーカーが楽曲を提供しているのですが、私の曲だけ唯一インディーズでした。
その曲とはNHKのドキュメンタリー「家族の肖像」に提供した「運命と絆」でした。
今でもあの時のプロデューサーさんのことを思い出します。
「ウォンさんのフアンです。インディーズのさとわミュージックさんはご無理かもしれないですが、是非楽曲を使わせてください。売れるとしても3万枚、うまく行けば5万枚ぐらいは売れるかもしれませんが、、、お願いします」
で、実際に売れたのは200万枚でした。

 全ては宇宙からのサポート、そうとしか思えない人生を歩ませていただいています。
寺山真一翁さん、山川ご夫妻、ピアノ選定に付き合ってくれた調律師さん、NHKの音響スタッフさん、「feel」のプロデュースさん、そして何よりも美枝子さんと親父さん、そして何よりもマイ・ベーゼン。
今、私を通して表出されている音楽は、彼らに支えられて、ようやく実現しました。
どれだけ感謝しても足りない。
その感謝は、音楽を通してしか、返すことが出来ないものなんだと思う。

マイ・ベーゼンがある。
自由に録音が出来る。
なんて恵まれていることだろう。
やっぱり、怠ける訳にはいかないな、、、
奇跡は、自ら始めることでしか、それは起きない、、、

ウォン・ウィンツァン
2017-02-21
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「大切な人の看取り方」デニー・コープ著
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 「死」について、私たちは、何故考えねばならないのだろうか?
考えることによって、果たして、「死」に抗うことができるのだろうか?
必ずやってくる「死」を、怯えながら、待たねばならないのだろうか?

 私達はあまりに「死」について、無知なのではないだろうか?
世界には「死」に関する哲学書や宗教書は、数え切れないほどある。
にも関わらず「死そのもの」の書物は殆ど無い。
哲学的な思考や、宗教的なビリーフを重ねることよりも、死の現場の経験を通して、ありのままの「死」を語る者の言葉に耳を傾けてみてはどうだろう。

 この本の著者、デニー・コープは、30年近くを、死を迎えつつある人々と、その家族のケアに捧げてきた。
彼女の語る「死」は、家族たちや友人、知人を看取った私の経験から得られた死の知識と重なる。
そして、彼らを看取る前に、この本に出会ったなら、もっとより良い看取り方が出来たことだろうと、強く思う。
デニーは看取りとは「大きな贈り物を受け取ること」だと書く。

 「死」は避けることが出来ない運命にも関わらず、「死」に対するヴィジョンを持っている人は殆どいない。
また看取る側も、同じように「死」の知識をもっていない。
その為に、人はなかなか「その人らしい死に方」が出来ない。
大抵は、混乱の中で、気がつくとその日がやってきてしまうのだ。
語弊を恐れず言うならば、看取る側の恐れと混乱は、豊かで最もスピリチャルな時間を台無しにしてしまうこともある。

 デニーは著書の冒頭に「生きているすべての人は、自分自身のためにも、大切な人のためにも、そして社会のためにも、死のプロセスについて学ぶ義務があります」と書いる。
この本は私達が、いつか来るだろう「死のプロセス」を歩むために、どれだけ勇気を与えてくれただろう。
そして、私を看取ってくれる人にも、是非この本を読んでもらいたいと思う。

 人には、その人の魂に赴くままに死ぬのが、私には一番自然に感じるし、苦しみも少なく、そして何よりも豊かな時間が流れる。
殆どの人が、川の流れに逆らって、泳ぎきろうとしている。
流れに身を任せるなら、それはなんとスムーズで、実り豊かなものになるだろう。
「死のプロセス」は、私達の人生で、最もスピリチャルで豊かな体験なのだ。
だから、私たちは「死」について、おおらかに、ごく普通の、あたりまえのこととして、語り合おうと思う。

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