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「約束の花」

「約束の花」
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約束通り、その部屋は光とお花にあふれていた

「みなさま、ありがとう。ピンクよ!世の中を明るくね! ベティ」
彼女がピンクのペンで書き残した最後の言葉だ。
皆からベティと呼ばれていた彼女は、その人柄からみんなに愛されていた。

1939年、今の韓国で生まれ、敗戦とともに壮絶は「引き揚げ」を体験した。
筆舌に尽くしがたい引き揚げの体験から、生き残ったものとして、戦争を語り継ぎ、平和を語ることが使命と感じ、同じ教師の夫と今日まで教師活動やボランティ活動を続けてきた。

しかし別れはいつかやってくる。
ベティが運命を受け入れ、死への屹然とした態度は、そんな戦争体験が背景にあったのかもしれない。
気丈に振る舞い、死に向き合い、家族や知人との別れをしっかりと交わした。

「まぼろしの影を追いて、うき世にさまよい、うつろう花にさそわれゆく、汝が身のはかなさ、、、
春は軒の雨、秋は庭の露、母はなみだ乾くまなく、祈ると知らずや、、、」
亡くなる直前、残された最後の力を振り絞り、家族たちと歌った曲、、、

「離れることが、こんなに辛い事か、、、
離れて待つことがこんなにも切ないのか、、、
愛することの少なくして、
こんなにまで多く愛されたことへの感謝と恩返しに、
これから残された私の時間を精一杯生きます
いつまでも一緒に生きてください
お体の無事をお祈りしております、、、、」

こんな切ない愛情いっぱいのラブレターを、夫に送ったのはいつの頃だろう、、、
しかし、それでも運命からは逃れられなかった、、、
いや、この部屋から光と花が失われない限り、ベティは永遠に家族とともにいることだろう

2013年12月7日、74歳で旅立たれた黒瀬禎子さんとご家族に、謹んで哀悼の意を表します。
ウォン・ウィンツァン
2014/01/02
by wtwong | 2014-01-02 12:13