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<ゴーストライタースキャンダルに思う>

<ゴーストライタースキャンダルに思う>

 これをスキャンダルというのだろうか。同じ作曲家として、なんともやりきれない気持ちで読んだ。作曲家は作曲することで、どのような見返りを、あるいは対価を求めているのだろうか。音楽は何ものにも交換不可能な、すなわち「価値」というものを持たないものだと思う。つまりお金に変えられるものではないのだ。音楽に価格というものを付加するために、ぎりぎりの飛躍をして、ようやくそれは市場に出る。そして曲は、どうしょうもなく作曲家と不可分なのだ。曲は自分の分身であり、切り離すことは出来ない、永遠に、、、逆に言うなら、自分の音楽を突き放すことも出来るのかもしれない。

 モーツアルトが最晩年に書いた「レクイエム」もゴーストライターとして依頼された曲だった。あるアマチュア音楽家であった伯爵は、依頼した曲を自分で写譜した上で自らの名義で発表するという行為を行っていた。モーツアルトはレクイエムを作曲し終えること無く天国に召されていった。才能がありながらも無名のアーティストはたくさんいる。逆にメディアに捏造された「物語」を羽織って、イメージだけで売れているアーティストも、たくさんいる。麻薬や、精神を病んで、世に出ること無く消えていった天才的なアーティストを、私は何人も知っている。

 あるアーティストは世に出て認められ、あるアーティストは認められることもなく、密やかに消えていく。その分岐点には何があるのだろうかと、いつも思う。私はなんてラッキーなのだろうか。有名にはならなかったけど、生きていけるだけの応援してくれるオーディエンスに恵まれている。メジャーにはなれなくとも、自由に自分の好きなように音楽をやりながら、大好きな仲間たちと、大好きな聴いてくれる人たちと、大好きな家族たちと、一緒に、この日本の片隅に生きている。
by wtwong | 2014-02-07 16:19 | essay