<台湾を巡る危険な力学、そして平和の可能性>
<台湾を巡る危険な力学、そして平和の可能性>
世界では常にどこかで戦争が起きている。
それはまるで地球上に激しい砂嵐が吹きまくっているかのようです。
戦後生まれの私が戦争の気配を感じたのは高校生の頃でした。
メディアから伝えられるベトナム戦争の報道を見ながら、ひどく緊張したのを覚えています。
ベトナム戦争以来、今日まで、世界のどこかで常に戦争が起きている、その事実はいつも意識の片隅にあって、私たちを脅かしているのです。
<見えない戦争の真実>
暴力的なもの、戦争の気配、そう云ったものにずっと私たちは脅かされて来ました。
そして、なぜ戦争が起きるのか?
あんなにも多くの犠牲を出しながら、にもかかわらず戦争をなぜ続けるのか?
決して真実が見えない問いを抱えながら、絶望しつづけていたのです。
<ウクライナ戦争によって見え始めたもの>
でも最近、とりわけウクライナ戦争によって、その力学が朧げながら見え始めています。
私は今回の侵攻が始まったとき「まただ」と怒りとともに、当然いつものように「なぜ?」とう疑問ももたげました。。
ロシアはなぜ無謀にウクライナに侵攻したのか?
戦争への疑問の答えを、インターネットに流される様々玉石混交の情報から、なんとか現実を見定めることができないだろうか、と考えました。
そして、この戦争をしっかり見定めようと、ともかくあらゆる情報を見続けたのです。
<台湾周辺の緊張>
日本に住む私達にとってウクライナ戦争は、所詮は対岸の火事です。
ところが最近、台湾有事の可能性を各方向から叫ばれるようになっています。
ついに日本も戦火の砂嵐に巻きっこまれそうなのです。
それは特にペロシ元米下院議長の訪台の時から、かなり現実味をおびてきました。
<一体どんな力学が、台湾、中国、アメリカ、そして日本に働いているのか>
昨年の12月、習近平はトップの座に、異例の3期目も居座ることになりました。
そしてその指標として「台湾の平和的統一」を掲げたのです。
習近平はこれから5年の任期の間に、その威信にかけて、台湾を中国に統一すると、公言したのです。
「平和的統一」という言い方ですが、もし台湾やアメリカが中国に対し対立的になった時、果たしてそれだけでは済むでしょうか。
<習近平の三期目の指標>
三期目が決まった時、習近平は中国外務省のトップに、元駐米大使を任命しました。
元駐米大使ですから、アメリカにそれなりにネットワークを持つ人なんでしょう。
そして米国務省のブリンケンと習近平との会談が予定されました。
習近平は当初アメリカと対話路線を採用したいと思っていたことが窺われます。
<スパイ気球の茶番>
そして起きたのがスパイ気球騒動です。
メディアはここぞとばかり、対中国バッシングを繰り広げました。
中国外務省も事態が飲み込めず、右往左往したようです。
結局、習ブリンケン会談は中止されました。
スパイ気球騒動の実態は、撃ち落とされた3~4個のうち中国のものは1個で、軍事的な意味などほとんどないものでした。
その他はアメリカの一般人の気象同好クラブのものだった。
本当に茶番ですね。
<対話の阻む勢力>
つまり中国とアメリカの間の対話の芽を積もうとする勢力、アメリカと中国を対立させたい勢力にまんまと指導されてしまったのです。
「対話をしよう」だれもがそう言っているのに、それをうち砕くような出来事が起きる。
いや、起こしている人たちがいる。
その後、中国とアメリカは対立姿勢を明確に打ち出しました。
<中国の対アメリカ姿勢>
今年1月下旬に入って、中国は、ウクライナ戦争の和平のための12項目を提示しました。
これはとても良くできた和平案ではあるのですが、はっきりとロシア寄りの内容だったのです。
ウクライナは中国との関係も深いこともあり、ゼレンスキーと習近平との会談が行われるかもしれないところまで漕ぎ着けたのです。
<アメリカの覇権の危うさ>
中国外務省は、その和平案を提示した直後に「アメリカの覇権の危うさ」というアメリカに対してかなりキツイ批判文章を提示しました。
中国はアメリカに対し、完全に対立姿勢を打ち出したのです。
その内容を読むと、この50年ほどのアメリカの策略と軍事による覇権戦争をしっかり見抜いて批判していています。
世界で戦争を起こし続けてきたのはアメリカなのだと指摘したのです。
目次を見ただけでもこの文書の過激さが伝わってきます。
この内容は日本のメディアは取り上げるべきなのですが、、、
その文章の「はじめに」は次のように書かれています。
その部分だけコピペします。
『二つの世界大戦と冷戦を経て世界最強の国となった米国は、他国の内政に干渉し、覇権を追求、維持、乱用し、破壊と浸透を進め、故意に戦争を行い、国際社会に害をなす行為をより大胆に行うようになった。
米国は、民主主義、自由、人権を推進するという名目で、「カラー革命」を起こし、地域紛争を扇動し、さらには直接戦争を仕掛けるという覇権主義のプレイブックを開発した。冷戦の精神にしがみついて、米国はブロック政治を強化し、紛争と対立をあおってきた。国家安全保障の概念を拡大解釈し、輸出規制を乱用し、一方的な制裁を他国に強要してきた。また、国際法や国際ルールに対して選択的なアプローチをとり、適当に利用したり捨てたり、「ルールに基づく国際秩序」の維持の名の下に、自国の利益につながるルールを押し付けようとしてきた。
本報告書は、関連する事実を提示することによって、政治、軍事、経済、金融、技術、文化の各分野における米国の覇権の乱用を暴露し、米国の慣行が世界の平和と安定およびすべての人民の幸福に及ぼす危険性について、より大きな国際的関心を喚起することを目指すものである』
以上のような文章で始まるその内容の最後に、面白いのですが、日本はアメリカの覇権主義の犠牲になっていると言及しています。
見抜いてますね。
<台湾と日本を戦争のできる国へ
台湾と日本のウクライナ化>
今アメリカは台湾と日本に軍備増強を要求し、日本も驚くような金額で武器の購入を続けています。
つまり台湾や日本を戦争のできる国に仕立て上げようとしています。
その状況はまるでウクライナ侵攻が起こる前に、アメリカとイギリスによって、ウクライナを戦争のできる国に仕立て上げたのととてもよく似ているのです。
<メルケルの衝撃の暴露>
昨年12月、メルケル元ドイツ首相が衝撃的な事実を暴露しました。
それは「ミンスク合意はウクライナに戦争の準備をさせるための時間稼ぎだった」という驚きの内容だった。
<ウクライナの内戦、ドンバス戦争>
ミンスク合意とは2014年から続いてきたウクライナ政府軍と東ウクライナのロシア語をメインにしているドンパス地域の民兵との内戦「ドンバス戦争」の停戦合意です。
その内戦は、2014年、ポロシェンコ大統領によってロシア語を禁止されたことが発端でした。
ロシア語を話す東ウクライナの人々は迫害されたのです。
2014年から8年間に1万4千人の子供を含む一般人が虐殺されたと欧州安全保障機構は確認しています。
<母語を禁止される>
それで思い出すのが、かつて日本が朝鮮半島を占領した時、ハングル語は禁止され、日本語以外を話す朝鮮の人々を迫害したのです。
そのためにハングルが喋れない、日本語しか喋れない朝鮮の人々は大変な苦しみをおったのです。
<ミンスク合意は、戦争の準備の時間稼ぎ>
さて、ドンパス戦争を停戦させるためにベラルーシの首都ミンスクで和平会議が行われました。
メルケル元ドイツ首相、オランド元フランス大統領、ポロシェンコ元ウクライナ大統領、そしてプーチンの4者がミンスクに集まって和平合意が取り交わされたのです。
しかし実際にはミンスク合意は履行されませんでした。
プーチンは何度もポロシェンコに履行するよう訴えます。
(実は今は亡き安倍首相もウクライナに行って、ミンスク合意を履行するよう促していた記録が残っています。)
それでもやはり履行されることはなかったのです。
履行されるはずもなかったのです。
なぜならメルケルの衝撃的な暴露にあるように、ミンスク合意はウクライナに戦争の準備をさせるための時間稼ぎだったわけですから、、、
<ウクライナ侵攻、そして全面戦争へ>
ウクライナは軍備を増強し続け、ドンバス戦争はますます激しさを増していきました。
そして2021年12月ごろから、ウクライナ軍は東ウクライナへの攻勢をさらに強めました。
負けそうになった東ウクライナの人々はプーチンに助けを求めたのです。
東ウクライナの人々は、ロシアにとって同胞です。
見捨てるわけにはいかなかったのでしょう。
そして、2022年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まったのです。
ウクライナ戦争は突然はじまったわけではなかった。
<戦争のできる国へ、軍備の増強>
さて、今の台湾と日本はますます戦争ができる国になりつつあります。
それは中国も同じで、ますます戦争体制を強化する方向で進んでいるさまざまな兆候を見ることができると報告されています。
軍備だけでなく、法整備や警察権力の強化とかです。
言論統制も強くなっているそうです。
<戦争の理由の捏造>
台湾、日本、そして中国が戦争ができる状況になりながら、戦争が起きないなんて保証は何もなくなります。
ベトナム戦争のきっかけになったトンキン湾事件は偽旗事件でした。
湾岸戦争は国連会議でのナイラという少女の偽りの証言で始まりました。
アフガン戦争はテロリストを匿っているという理由だけで始まりました。
イラク戦争は大量破壊兵器を持っているという根拠のない理由で始まりました。
これらの戦争でいったいどれだけの民間人が命を落としたことでしょう。
戦争の理由なんて、いくらでも捏造できるのです。
<同盟国アメリカの武器産業>
では同盟国であるアメリカは台湾や日本を守ってくれるのでしょうか?
これもウクライナを見ればよくわかります。
武器は湯水のように支給されるでしょう。
なぜってアメリカの武器産業は儲かるのですから。
ウクライナ戦争のおかげでアメリカの軍事産業の株は鰻登りです。
でもアメリカ軍は直接的にはウクライナで戦っていません。
(表向きは参戦してはいないのですが、正確には傭兵として、戦場に参加しています。
日本人傭兵もいるようですが、軍部の腐敗に怒って、最近依願離脱したとか、、、)
たとえ同盟国でも、台湾や日本のためにアメリカ人の命をかけるつもりはないのです。
ウクライナ戦争でそれは実証済みです。
<ウクライナ戦争の死傷者、そして現状>
イスラエルの諜報機関モサドが今年になって、ウクライナ戦争の戦況を具体的な数字で発表しました。
それによるとウクライナ軍のこの一年の死傷者は4~50万人と書かれているのです。
驚くべき数字です。
最近では最前線で戦っている老人や10代の子供の映像がTwitterやテレグラムに上がっています。
ほとんど訓練も受けていない彼らは、最前線に送り込まれて、生存期間は二日がせいぜいと言われています。
それでも武器は今でも送られ続けています。
それはまるで出血し続けているのに、止血することもなく、無理やり生かすために、ただただひたすら輸血を続けているようにしか見えません。
本当に悲惨な状況なのです。
<ウクライナ戦争はアメリカの代理戦争>
中国の和平案はNATOとアメリカ(国務省)によって跳ね除けられたと、先ほどツイッターで読みました。
戦争の継続の決定権はゼレンスキー・ウクライナにはないのです。
ウクライナ・ロシア戦争はまだまだ続くことになったようです。
ウクライナ兵と一般人、そしてロシア兵の受難は続きます。
そして日本もその救いのない戦争にますます加担しているのです。
<台湾の民意>
さて、台湾の人々はどう考えているでしょう。
先日、社会学者、中国問題のオーソリティー、遠藤誉さんのコラム、台湾民意調査「アメリカの台中対抗のために利用されたくない」を読みました。
その内容は、台湾一般人を対象に様々な角度からアンケートを取っていて、その分析がされていました。
台湾の人々は気がついているのです。
湾岸戦争も、イラク戦争も、アフガン戦争も、止めようと頑張った人々がいました。
でも、残念ながらこの50年間、戦争は必ず始まりました。
戦争を起こすことに謀略に長けた人々が、アメリカ国務省にいるのです。
そしてそれを後押しする軍需産業やグローバリストが控えているのです。
アメリカの軍需産業は、世界のどこかで戦火が上がっていないと存続できないところまで肥大してしまいました。
それはまるで吸血コウモリのようです。
(コウモリさんごめんなさい)
<戦争の本性、米元国務長官オルブライトのインタビュー>
私は先ごろ、ビル・クリントン政権時代の女性初の国務長官、オルブライトのインタビュー記事を読み、驚愕し、怒りが込み上げてきました。
インタビューアーが「対イラク制裁で、これまでに50万人の子供が死んだと聞いている。
それだけの犠牲を払う価値があるのか?」とオルブライトに問いました。
彼女は「それだけの価値がある」と答えたのです。
彼らの目的のために、子供が50万人も犠牲になっても、構わないと、平然と言ってのけたのです。
それに対し国連の担当要員が「私はこれまで対イラク制裁について”ジェノサイド”という言葉を使ってきた。
なぜならこれはイラクの人々を殺戮することを意識的に目指した政策だからだ」というコメントを残しているのです。
私はようやく「戦争の本性」に出くわしたと、震えながら感じ取りました。
彼らにとっての「価値」のために一般の人々のどれだけの犠牲を払っても構わない、彼らはそう言い切ったのです。
<戦争の可能性、平和の可能性>
さて、現状を突き進めば、台湾、アメリカ、中国、そして日本の間で戦争が起きない可能性の方が少ないと、私は思います。
戦争を起こしたい人々にとって、台湾人や日本人の犠牲などどうでもいいのですから。
この50年の歴史を振り返るなら、戦争は起きます。
では、どうしたら平和を実現できるのか。
その為にはまず戦争を起こすことが自分の使命だと思っている人々、つまり「戦争屋」という人々を政府のトップから排斥する必要があるのだと思います。
もちろんそれはアメリカ国民にお任せするしかありません。
でも、日本の政治家たち、国民たちの気概も試されているのです。
台湾は中国と対話を重ね、香港のような形でない、相互にウィンウィンの関係性を重ねていく。
もちろん中国は一筋縄でいかない国です。
相当しっかり自立心と気概を持って立ち向かわないと、香港のようになってしまいます。
いづれにせよ国民が皆で知識を共有し、国として自立し、クレバーになって、国家間での対話を重ねる。
それしかないのです。
ウクライナのようにならないために、台湾、日本は本当にしっかりしないと、大変なことになります。
戦争を回避するためには「対話」しかないのです。
ウォンウィンツァン
2023/03