NewCDレコーディング顛末
<レコーディング顛末>(ちょっと長いです。)
新しいCDの録音プロセスは、ほぼ終了しました~。
つまりCDプレス業者に渡せる「音源」までにたどり着いたということです。
やった~~
これからジャケットアートやデザイン、文字情報、リリースに伴った様々な実務的な作業せねばならないことは山ほどあります。
それは美枝子さんやスタッフに頑張ってもらわなければなりません。
でも、わたし的には随分と楽になりました。
<制作開始のセレモニー>
CDの制作スタートは、ピアノがオーバーホールを終えてサトワミュージックに帰ってきた5月26日から始まりました。
島村楽器さんのピアノ工房から550Kgのベーゼン290が運び込まれたその日は、全てが始まるためのセレモニーのようでした。


<ピアノが主役>
まずピアノをどこにセッティングするのか。
今まで部屋のスペースをなるべく広く取るために、壁に押し付けていたのです。
今考えると、それってなんか考え方がおかしいよね。
美音志くんが「真ん中に持ってきたら~」とその助言で部屋の真ん中に、つまり吹き抜けの真ん中、主役格の位置に陣取ることにしました。
それはマイキングする上で大正解でした。
主役はピアノじゃ~~

<マイキングが命>
そして重要なのはマイキング、、、
これでピアノの音質が決まってしまいます。
今回ピアニスト高橋全さんに手伝ってもらって、試行錯誤しました。
今までのレコーディングは単一指向マイクしか使ってこなかったのです。
それは部屋の一次反射や癖をなるべく避けたかったわけですが、音質は限定されてしまいます。
今回は無指向マイクですべて録音しました。
新しい家を設計する時、吹き抜けスペースを作り、天井を斜めにしたり、形状をイレギラーにしたおかげで、部屋の癖がだいぶ軽減されたのです。
とは言え、マイク位置がピアノの天板の外だとやはり部屋の癖が出てしまうので、天板の内部にセッティングするしかないわけですが、、、
でも、無指向マイクのお陰で低域の音量感がまし、位相の乱れも少なくなり、音質も素直で、とても気に入った音でレコーディングできました。

<キラキラの子供から、ちょっと大人に、、、>
そして調律と整音(音作り)、、、
オーバーホールから戻ってきたばかりの音質はめちゃキラキラし過ぎで、とてもじゃないけど録音できる代物ではなかったです。
調律師の中村幸己さんと丁々発止して、ようやく奥行きのある音質なったわけです。
彼の技術力に、いつも助けられています。
でも、オーバーホールから帰ってきたばかりのピアノの音色は日々どんどん変わっていきます。
調律もドンドン狂ってきちゃうし、、、汗
それもOKしてのレコーディングを続けることに、、、。

<いよいよ録音開始>
実際のレコーディング、つまり録音が始まったのは6月7日でした。
レコーディングは一日に一回、時間にして一時間半ぐらい。
その時間に集中するために様々コンディションを整えて、一気に10曲を通してレコーディングします。
実際のレコーディング時間は1時間半でも、結局1日フルの仕事になります。
<スタジオを捨てて、リビングルームで、、、>
かつては、小さいけどそれなりに防音したスタジオがあって、24時間、いつでも演奏録音できたのですが、新しい家ではスタジオは作らなかったので、いろいろ条件が大変です。
外部との遮音性能のはそれなりにあるのですが、とは言っても外に少しは漏れるので、夜は演奏できません。
家の中の音、洗濯機とか電話とかエアコンとかはもろにマイクに被ってしまいます。
録音する1時間半、美枝子さんも息を潜めなければなりません。
孫娘たちが保育園から戻る前にとか、午後3時からの飛行機の騒音を避けたり、夜にはご近所を考えねばならないし。
いろいろ条件はあるわけですが、それでも広い空間で演奏できることは、小さなスタジオに籠るより、よほど精神的にはいいのです。
広い空間で演奏したい、、、
新しい家を建てる時、スタジオを捨てたのは、そんな気持ちがありました。

<インスピレーションがやってきた日>
録音記録を見ると、7日、8日、9日、12日、14日昼、14日夕方、、、、
ほとんどのOKテイクは12日と14日昼のテイクに集中してました。
でも、それでもOKが出せない曲があって、「遠景」を23日、「PlainlyPlainly」は27日に集中的にレコーディングして、5テイク目にOKを出しています。
12日は特筆すべき日でした。
7日8日9日と続け様にレコーディングして、なにかが違う感じがして行き詰まっていたのです。
そこでレコーディングを一旦ストップして、冷静になる期間を設けてみました。
そして美枝子さんとカフェで雑談している時、ひらめきというか、気づきがやってきました。
<テンポは魂が選ぶ>
その一つはテンポの意識を変えること、、、
テンポと音楽性は実に親密な関連があるわけです。
どのテンポを選ぶかは、自身が依って立つ音楽的スタンスが選ぶわけです。
この数日のテンポの選び方は、曲として成立するためにテンポを選んでいたフシがあります。
それをやめる、つまり「曲を成立させる」という固定観念を捨てる。
その時の魂レベルで求めるテンポに委ねる。
それって出来るようで、なかなか出来ないのです。
<ピアノの音という固定観念>
もう一つ、シフトペダルの音色をメインに持っていく。
一般にシフトペダルは、曲の一部に変化をもたらすために、つまり音色を変化させるためにあります。
つまりピアノ音楽の世界ではシフトペダルを踏まない状態がメインで、シフトペダルを使うのはパーセンテージとしてはとても少ないのです。
その固定観念も取り払いました。
つまり私にとってはシフトペダルを踏んだ、音質的には柔らかい状態がメインであって、メロディーの一部に明るい音質を求めるときにだけシフトペダルを解放する。
ピアノ音楽の固定観念を逆転させたわけです。
<ダイナミックスの振り幅をコントロールする>
それとダイナミックレンジの振り幅も再考しました。
振り幅が狭いと音楽が窮屈になり、大きすぎると音楽が破綻します。
一つ一つの音の強弱に想いを込めるわけです。
最適な振り幅を演奏の最中に瞬時に選んでいくわけですが、これが技術的にとても苦労しました。
オーバーホールから帰ってきたピアノは良く鳴るようになって、以前よりレベルが大きいのです。
ちょっと強く演奏するとびっくりするほどの音量になってしまいます。
そこを抑えるのが大変でした。
曲によるわけですが、もっとも強く打弦した音でさえ70%ぐらいの強さだったと思います。
そんな風なインスピレーションをもって演奏したのが成功して、12日14日に多くのOKテイクを録音することが出来ました。
でも美音志くんの二曲「遠景」と、とくに「PlainlyPlainly」はなかなかたどり着くことが出来ず苦労しました。
結局6月27日までかかってしまいました。
<プレイバックは苦行>
プレイバック作業は、同じ曲をあっち聞いたり、こっち聞いたり、同じ曲を何度も聴き返すので、これが結構ハードな作業なので、なかなか手がつけられずに何日も放置していました。
一曲のレコーディングは一回だけで済むわけですが、でもプレイバックは複数回。
圧倒的に時間と忍耐と、注意力が必要になります。
OKテイクは一曲だけ、その他のテイクはダメなわけで、ダメテイクを散々聴くわけですから、シンドイです。w w w
そのOKテイクがない場合も当然あるし、、、
また、レコーディング直後って、判断を誤ることも多いのです。
ある時、コーヒーをがぶ飲みして、甘いもの食べて、なんかやけっぱちになって「エイヤ~」という感じでプレイバック作業に突入したのが、可笑しな記憶です。
<求める音楽性が実現できているか?>
OKテイクを決める基準は、もちろん良い演奏、つまり自分が音楽を通して実現したいこと、聴く人に伝えたいことがしっかり演奏した音に注ぐことが出来ているか?ということなわけです。
でも、時にして、それが実現できているかどうか混乱することもあるわけです。
音楽を通して実現したいこと、伝えたいことが何だったのか、わからなくなるのです。
まだまだ未熟で自分の音楽を確立できてない頃はそんなことで、100テイクとか、それ以上になってしまうこともたくさんありました。
実際今回の曲は、2022年1月ごろにレコーディングしていて、その時はまだOKテイクを出せる段階ではないと自覚して、一旦レコーディングをやめているんです。
その後ピアノをオーバーホールに出し、ピアノが戻ってきてから再挑戦したわけです。
<OKテイクを決めるのは冷静な判断より一期一会>
今回OKテイクを決める上で、孫娘の寝顔がとても助けになりました。
孫娘ちゃんの面倒を見ることが多いのですが、抱っこしたまま寝てしまったので、作業を続けたくてそのままヘッドホーンでプレイバックしていたんですね。
そして「Cavatina」の9日のテイクを聴きながら孫娘ちゃんの寝顔を見ていたら、思わず涙が溢れてしまったのです。
それと12日の「インナージャーニー」の時も涙が、、、
そんなわけで、この二曲は孫娘ちゃんがOKを決めてくれました。
<ピアノはドローイング>
OKテイクが確定したら、バグ(ちょっとしたミス)を修正し、修正できない箇所は目を瞑る。www
オーバーダビング作業に入ったのが7月に入ってからだったかな。
一日一曲ペースで、全10曲。
今回ピアノソロにしても良いかとも思ったのですが、ストリングスシンセサイザーをやはり入れたいと思いました。
絵画作品に喩えれば、鉛筆やペンによる線の描写はピアノの音色、水彩などでボカシに当たるのがシンセサイザーのパッドの音色に例えられると思います。
シンセサイザーを加えることで作品に立体感を付与することが出来ます。
今回のCDの大きな特徴になるでしょう。
そうそう、美音志くんの曲「インナージャーニー」に御本人のギターソロをお願いしました。
すごくよく歌っていて、作品に彩りを添えてくれています。

<誰一人、同じ聴き方はしない>
さて、オーバダビングを終えて、ミックスダウンに入ったのが7月中旬ごろでしょうか。
ミックスダウンは仕上げ作業ですね。
オーディエンスに聴いてもらって、違和感のない、受け入れられる音質やバランスにするわけです。
でも聴く人が誰一人として、同じ状況で聴くことはありえない。
ミニコンポ、イヤホーン、ヘッドホーン、カーステレオ、iPhoneのあの小さなスピーカーだったり、音量もまちまち。
その全ての状態で良い音として聴いてもらいたいわけです。
(もちろんそんなの有り得ないわけですが)
なのでミックスを確認するために、スピーカやイヤホンやヘッドホーン、カーステレオなど、あっちで聴いたり、こっちで聴いたり、、、、
その作業に約2週間はかかっています。
一般の業界のスタジオでのミックスダウンにこれだけの時間はかけられません。
まあ、とことん納得いくところまでやって、着地したのが昨日(6月22日)の話です。

<2ヶ月間の旅のプロセス>
レコーディングは大雑把に、録音、プレイバック、オーバーダビング、ミックスダウンに分けらると思いますが、実際には実に細々したことがあるし、直線的に進むわけでなく、何度も行きつ戻りつしながらの作業になります。
あの曲のあのところはああ解釈しよう、とかシンセの音色を曲によって微妙に変えるべきだ、とかとか、常に頭の中で音楽について考え続けていたこの2ヶ月間でした。
<自分にとってベストなレコーディング環境とは>
レコーディングというものを体験したのは26歳ごろアメリカの私設のスタジオからでした。
一体何回スタジオという所で演奏したろう。
そしてレコード会社のスタジオや営業スタジオというところでの画一的なレコーディングプロセスに自分は馴染めない、資質的に自分の演奏は出来ないと見切りをつけて、高いピアノを自宅に買い込んで、レコーディングを始めたのは43歳ごろ、、、
自宅レコーディングというのは、これはこれで泥沼で、どれだけレコーディングのために労力と試行錯誤とお金を費やしたろう。
<さすが歳の功、レコーディングは不安と喜び>
そして今回のレコーディングは今までとは全く違う体験だったように思う。
もちろんレコーディングは毎回初心者のようなスタンスから始めるのだけど、どのエレメントも見極めがとても早く、的確でした。
やはり経験の積み重ねなのだろうと思います。
大変だったけど、手応えがあり、楽しかった。
集中的に音楽に向き合うことができて本当に幸せだった。
レコーディング期間中の自分の魂の躍動や不安や震えが愛おしく思えます。
<新しい出発点>
さとわミュージックが最後にリリースしたCDは2016年の「光を世界へ」ですから、あれから8年間のブランクがあります。
ライブレコーディングしたアルバム「おくる音楽」をCD化する目論見はあったのですが、結局ストリーミング配信としてリリースされました。
あれから実に色々なことが社会的にも、個人的にもあり、CDの制作どころではなかったことは確かです。
世の中的にはパンデミックがあり、CDはますますストリーミング配信やyoutubeに主役の座を奪われていきました。
個人的には、父の他界、家の建て替え、脳血栓の入院、などなど、実にダイナミックでパワフルな8年間でもあったのです。
でも、この8年間は別の意味で充実していて、生き方の立て直しとでも言えるものがありました。
さとわミュージック的にも、私個人的にも、手放すものは手放し、新しいスタンスに立ち、再出発が始まった感じがしているのです。
残りの人生を悔いなく音楽生活を送るために、ようやく揺るがない立ち位置と環境を確立した感じです。
そして今回のCD制作はその第一弾になるのでしょうか。
<CDというモノに託す>
今の時代、CDという形にすることに、何かしら抵抗というか、違和感があります。
私自身ももっぱらストリーミングで音楽を聴いているし、物というものが増えることに抵抗があるのです。
でも、今回はその「物」を作ることが自然に思えているのです。
何というか、今までお世話になった方達に送りたい、手渡したい。
例えば、お中元やお歳暮の代わりというか、www
メールではなく、お手紙として親しい人たちに送りたいというか、、、
想いを込めた私たちのメッセージとして、大切な人々に送りたい、今回はそのように強く思っているみたいなのです。
多分、夏の終わりか、秋か、初冬にはリリース出来ると思います。
ぜひ楽しみにしてください。
ウォンウィンツァン
2023/07/25

